【富士ローヤルR-105】コーヒー屋になりたい人へ焙煎機の大きさの話【コーヒー焙煎機】
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はじめに
ひつじ珈琲の焙煎機は1kg釜と5kg釜があり、用途に合わせて使い分けています。どちらも直火式なのですが、味の傾向はそれぞれ異なり、1kg釜は少し個性的になり、5kg釜は丸く優しい味になりやすい特徴があります。
直火はどこか田舎くさいような味ではあり、とてもひつじ珈琲に似合っているし、私には、近代的なシャープな酸味より丸い酸味が合っているなと感じます。
今回はひつじ珈琲の歴史を紡いできたR-105の話をしたいと思います。
かっこ悪い焙煎機?
昭和の焙煎機
ひつじ珈琲の焙煎機が製造されたのは昭和58年で、私は生まれるより前であるらしい。オーバーホールの時に富士珈機の方が教えてくれました。偶然にももう一台のR-101も同じ昭和58年製でとても驚いたのを昨日のことのように覚えています。
今や、海外製の焙煎機を導入する焙煎屋さんも珍しくなくなった。PROBATとかGiesenとか。やはり最新の焙煎機は扱えるカロリーが大きいし、パワーがある表現ができる。そして何よりピカピカでかっこいい。
ひつじ珈琲の焙煎機
うちの焙煎機はどう見えるだろう。私はめちゃくちゃかっこいいと思う。この焙煎機は思い入れが深いし、何よりもこの焙煎機の味のファンになってくれるお客さんがたくさんいます。お客さんは珈琲屋が承認欲求を満たすために存在していないし、それを求めていなんじゃないかと思います。
F.ROYAL R-105
電源スイッチ
後付け感が満載のスイッチ、前のオーナーが取り付けてくれたらしいです。左は本体の主電源、右は攪拌のウイングを回すスイッチ。スイッチは重く深い。グッと押し込むとグゥンと低い音がなってゆっくり釜が回り始めます。
後付けなので普通の位置についておらず作業性はめちゃくちゃ悪いです。
ガスバーナー
バナーは増設されてるとか、されてないとか。正直よくわかっていません。微妙に規格が違うらしくデフォルトなのかわからないらしい。火の付きは悪く、釜が温まるまでは消えていないか注視しなくてはいけません。
この青く燃えるガス火が穴の空いたドラムを舐め、直火独特のあの感じを演出する。私はこの焙煎機で焼いた中煎りくらいのコーヒーが特に好きです。ちなみに直火は一般的には「じかび」と読みますが、業界では「ちょっか」と読みます。
直火は対流熱、輻射熱、伝導熱の全てに気を使うのでまさに職人気質な人に向いてる焙煎機だなと思っています。
ダンパー
焙煎は蓄熱と加熱と排気によって釜内の温度や湿度を調整しながら焙煎していきます。釜内の水分量を調整するのがダンパーです。ダンパーを開けると煙突と釜内が繋がり空気が一気に排出されます。釜内の温度が下がりすぎないように火力とのバランスを考えなくてはいけません。
テストスプーンと排出口
焙煎の進み具合をテストスプーンを使ってみます。グリーンだった豆が色づき薄茶色から焦茶色へと変化していきます。このタイミングでさまざまな化学変化が起こるのですが、それについてはまたの機会に。めちゃくちゃ長い話になります。
排出口から豆を出すのですが、ここがめちゃくちゃ歪んでます。蓋の裏側に隙間ができてしまうので豆が挟まり未焙煎豆が発生しまうというポンコツぶりを発揮します。
焙煎配信ではよく古いで排出される最初の豆を受けていますが、これが原因です。
焙煎機の裏話
茨城からきた焙煎機
ひつじ珈琲のR-105は茨城県いある珈琲屋さんから安く譲り受けました。その優しいオーナーさんがいなければ、当時資金もなかった私が5kg釜を手に入れることはできなかったと思います。お金は分割で支払わせていただきました。
焙煎機は軽トラックで引き取りに行きました。送料よりも自分の日給の方が安かったので。
茨城県から栃木県の長い道のりを思い焙煎機を乗せ、ゆっくりゆっくり帰ったのを今でも良く覚えています。
しかしその後、5kg釜は1年くらい眠りにつくことになります。
1年眠らせた訳
やっとの思いで運んだ焙煎機ですが、重大な問題がありました。小さな問題もありました。
小さな問題は、オーバーホールが必要だったことと、都市ガスからプロパンガスへ切り替えなければいけなかったこと、煙突の工事が必要だったことです。
それに関しては自分で解決したので問題なかったのですが、
ひつじ珈琲が抱える重大な課題。それは、5kg釜を回すほど売れていないという現実でした。
当時は1kg釜のみで問題なく豆の供給ができていましたし、5kg釜を回すと生産過剰になってしまう恐れがありました。その為、なんと1年も眠りにつくことになります。
じゃあ、なんで焙煎機買ったんだよ。というツッコミが来ると思いますが、理由は明確です。
そこに焙煎機があったからです。
商売やる人に伝えたい意外な結果
それから、世の中的にはコロナ禍となり、ひつじ珈琲ではYouTubeが流行り始め、それと同時に注文が増えていきました。焙煎機も高騰していったので、あの時焙煎機を買った判断は奇跡的だったと思います。後先考えない買い物でほとんど失敗しない男です。
それでも5kg釜がなくてもなんとかなっていたのですが、YouTubeの話題作りの為に、煙突づくりからやってみようということに。1年の時を超えて5kg釜が動き始めたのです。
5倍の速さで焙煎ができるようになった結果、
常に在庫がある状態を保てるようになると売り上げが爆発的に伸びていきました。
なんと潜在的にコーヒーを買えていなかったお客さんが、思ったよりいた事に気付かされました。さらに流通が安定すると仕事の依頼や卸しが増えていったのです。
「イけている」と思っている状態は案外、自己満足でしかなく、意外なところでお客さんに迷惑をかけていることもあるんだな、という学びの機会となりました。
これからの話
私はこの焙煎機が好きです。かと言って海外製の焙煎機や新品のピカピカの焙煎機に興味がないわけではありません。もっとひつじ珈琲の規模が大きくなった時に導入を考える日が来るかもしれませんし、来ないかもしれません。それはその時に考えます。
この焙煎機はモーターがドラムを回し続けてくれる限り私のパートナーであり続けると思います。
まとめ
今回はひつじ珈琲の焙煎機についてお話をしてみました。
お店をやっていると色々なところが見えなくなって訳もわからず上手くいかなくなったりします。そんな時は思い切った行動も悪くないですね。私のように後先考えない行動が後の自分を救うことがあるのかも、しれません。
それではまた次回のブログでお会いしましょう。
ひつじ珈琲のYouTubeチャンネル
コーヒーに関することを科学的にマニアックに
掘り下げていく番組です。
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